ライブ・公演・映画・伝統芸能・ゲーム制作といったエンターテイメントコンテンツの企画制作には、時として莫大な費用が掛かります。これらの活動を行う者が自ら資金を拠出することは容易ではないうえ、いわゆるスポンサー(資金の拠出者)が見つからないことも少なくないでしょう。
そこで、ぜひ知っておいていただきたいのが、補助金という選択肢です。補助金を活用することで、資金面で断念していた文化活動や芸術活動が実現できるかもしれません。
しかし、補助金には非常に多くの制度があり、何をどのように活用すればよいかわからない人も少なくないでしょう。そこで今回は、エンタメ補助金専門の行政書士、本田羽留香が文化・芸能・アーティスト・芸術家・クリエイター向けの主な補助金制度をまとめて解説します。
補助金とは
補助金とは、国や地方公共団体、独立行政法人などから、まとまった活動資金を受け取れる制度です。融資とは異なり、原則として返済は必要ありません。ただし、補助金は申請をすれば必ず受け取れるものではない点に注意が必要です。
要件を満たして申請したうえで、補助金事務所局から補助金の交付対象としてふさわしいと判断された場合に、補助金が交付されます。補助金の申請〜実績報告(入金まえの会計報告)までを自力で行うハードルは非常に高いため、補助金を熟知した専門家のサポートを受けるとよいでしょう。
※補助金は年度や募集回によって補助額、補助率に変更が生じることもあり、以下の補助金情報は2024年度の情報となります。最新情報についてはエンタメ弁護士.comまでお問い合わせください。
エンタメ分野向けの補助金1:J-LOX
アーティスト・クリエイター向けの補助金の1つ目は、J-LOXです。これは、日本のコンテンツ産業の輸出拡大・海外展開や新市場開拓を促すことを目的として、特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)が実施している補助金制度です。母体は経済産業省で映画・アニメ・ゲームなどのエンタメコンテンツに関する補助金の中では最も規模が大きいことが特徴です。
J-LOXによる補助金は活動の種類ごとに分かれています。ここでは、主な補助金制度について、概要を紹介します。
具体的な要件や申請期限などは公募要領を確認するか、エンタメ弁護士.comまでご相談ください。
海外向けのローカライゼーション&プロモーション支援
海外向けのローカライゼーション&プロモーション支援とは、日本発コンテンツ等の海外展開を促進し、「日本ブーム創出」を通じた「関連産業の海外展開の拡大」と「訪日外国人等の促進」につなげる取り組みを支援する補助金です。補助上限額は1案件あたり2,000万円で、補助率は2分の1とされています。
国内映像制作を行う事業(プロダクション・ポストプロダクション支援)
国内映像制作を行う事業(プロダクション・ポストプロダクション支援)とは、制作会社が資金調達やIP活用等に参画し、海外市場に訴求する高品質な映像作品制作を通じてコンテンツの国際競争力や収益基盤の強化を促進する取り組みを支援する補助金です。補助上限額は1案件あたり2億円、補助率は2分の1とされています。
国内映像企画開発を行う事業(プリプロダクション支援)
国内映像企画開発を行う事業(プリプロダクション支援)とは、高品質なコンテンツの本制作に向け、多様な資金調達やパートナー獲得、クオリティの高い企画・脚本等の開発、契約交渉・資金調達における権利処理を行う取り組みを支援する補助金です。映画のロケハン、ゲームのデモ版開発・企画書制作など本格的なコンテンツ制作の前段階にかかる経費を補助する制度であることが特徴です。補助上限額は1案件あたり1,000万円、補助率は2分の1とされています。
海外制作会社による国内ロケ誘致等に係る支援
海外制作会社による国内ロケ誘致等に係る支援とは、海外映像制作者が日本でロケ撮影等を行う事業を積極的に誘致することで、国内人材のさらなる活用を促し、映像産業の一層の発展に繋がる取り組みを支援する補助金です。補助上限額は1案件あたり10億円、補助率は2分の1とされています。
次世代デジタル技術等を活用したデジタルコンテンツ創出支援
次世代デジタル技術等を活用したデジタルコンテンツ創出支援とは、個々のクリエイターを支援する環境整備や、我が国発のIPを活用したビジネスモデルの高度化、新たなコンテンツ体験価値の提供を図る取り組みを支援する補助金です。メタバース空間を使った新しいコンテンツ体験、NTFアートを使った体験型コンテンツなど最新のエンタメコンテンツ制作に特化した補助金制度です。補助上限額は1案件あたり1億円、補助率は2分の1とされています。
コンテンツ製作の生産性向上に資するシステムの開発・実証支援
コンテンツ製作の生産性向上に資するシステムの開発・実証支援とは、新たな技術導入等による、コンテンツ製作・流通工程の効率化や強化に資するシステムの開発・実証及び業界内の普及促進に繋がる取り組みを支援する補助金です。
補助上限額は、原則として1社あたり5,000万円、補助率は2分の1とされています。ただし、既に開発されたシステムについてコンテンツ業界に導入促進する事業などでは、補助上限額が1社あたり500万円となります。
エンタメ分野向けの補助金2:アーツカウンシル東京
文化・芸能・アーティスト・芸術家向けの補助金の3つ目は、アーツカウンシル東京です。
アーツカウンシル東京とは、公益財団法人東京都歴史文化財団が運営している地域のニーズや課題に即した文化事業を地元自治体と連携し住民に身近な施設等で展開することで、芸術文化に気軽に触れられる機会の創出や、地域における文化事業の担い手となる区市町村の企画実施力の向上を目指す制度です。対象地域は都内or海外で、東京都内に住所がある芸術団体が活用することができます。法人でも個人でも申請することが可能で補助額は30万円〜2000万円ほどと枠によって幅広いです。
東京以外の地域でも独自にアーツカウンシル制度がある都道府県はありますが、
ここでは、アーツカウンシル東京による主な助成制度について、概要を紹介します。
スタートアップ助成
スタートアップ助成とは、東京の芸術シーンで活動を展開していこうとする新人芸術家や新進の芸術団体による、新たな芸術活動へのチャレンジを支援する制度です。対象となる活動分野は、音楽、演劇、舞踊、美術・映像、伝統芸能、またはこれらの複合です。
東京芸術文化創造発信助成
東京芸術文化創造発信助成とは、東京における多様な創造活動や、国際的な創造活動・発信活動等を助成する制度です。若手からベテランまでキャリアごとに助成のポイントを設け、特に、若手・中堅を重点的に支援します。
単年助成のほか、長期助成や芸術創造環境の向上に資する事業が設けられています。対象となる活動の範囲は、音楽、演劇、舞踊、美術・映像、伝統芸能、またはこれらの複合です。
芸術文化による社会支援助成
芸術文化による社会支援助成とは、さまざまな社会環境にある人が共に参加し、個性を尊重し合いながら創造性を発揮することのできる芸術活動や、芸術文化の特性を活かし社会や都市のさまざまな課題に取り組む活動を支援する助成制度です。芸術の分野は、問われません。
伝統芸能体験活動助成
伝統芸能体験活動助成とは、伝統芸能の振興に向けて、自ら伝統芸能の実技体験を行う人が増えるための取り組みを支援する助成制度です。対象となる活動の範囲は、日本の伝統芸能(箏曲・地歌、尺八、笛、邦楽囃子、長唄、各種浄瑠璃、琵琶楽、雅楽、能・狂言、日本舞踊、華道、茶道、書道)です。
芸術文化魅力創出助成
芸術文化魅力創出助成は、より多くのアーティストやスタッフの支援につなげるため、複数の団体や多くのアーティストが参加する持続力・波及力のある革新的な創造活動、フェスティバルやアートプロジェクトを支援する助成制度です。
対象となる活動は、音楽・演劇・舞踊・美術・写真・文学・メディア芸術(映像・映画、マンガ、アニメ、ゲームなど)・伝統芸能・芸能・生活文化(茶道、華道、書道など)・ファッション・建築・特定のジャンルにとらわれない芸術活動(複合)などです。
ライフウィズアート助成
ライフウィズアート助成とは、アート作品を都民の日常生活の中に根付かせて、アーティストの活動領域を広げる基盤整備を進めることで、芸術文化に携わる人材を増やし、好循環を生み出すことにつながる取り組みを支援する助成制度です。対象となる活動は、視覚芸術(ヴィジュアルアート)全般です。
東京ライブ・ステージ応援助成
東京ライブ・ステージ応援助成とは、活力ある芸術文化・エンターテインメント環境をとりもどすため、コロナ禍から回復しつつある中小の団体による舞台芸術活動を支援する助成制度です。
対象となる活動は、演劇、舞踊・舞踏、音楽(クラシック、ポップスなどライブ全般)、伝統芸能、その他複合的な舞台芸術活動です。
エンタメ分野向けの補助金3:芸術文化振興基金
文化・芸能・アーティスト・芸術家向けの補助金向けの補助金の2つ目は、芸術文化振興基金です。ここでは、芸術文化振興基金による補助金の概要を解説します。さらにくわしく知りたい場合は、エンタメ弁護士.comまでご相談ください。
制度の概要
芸術文化振興基金は、独立行政法人日本芸術文化振興会が展開しています。この制度は、全国の文化芸術活動への助成を行うことを通じてあらゆる人々が文化芸術とつながることのできる社会の実現などが目的とされています。
対象となる活動と助成対象者
芸術文化振興基金の対象となる主な活動と助成対象者は、それぞれ次のとおりです。
舞台芸術・美術等の創造普及活動
1つ目は、舞台芸術・美術等の創造普及活動です。
この区分では、自ら主催して行う次の活動などが助成対象となります。
- 現代舞台芸術創造普及活動(音楽):オーケストラ、オペラ、合唱(古楽を含む)、吹奏楽、室内楽(古楽を含む)など
- 現代舞台芸術創造普及活動(舞踏):バレエ、現代舞踊、舞踏、民族舞踊など
- 現代舞台芸術創造普及活動(演劇):現代演劇、児童演劇、人形劇、ミュージカルなど
- 伝統芸能・大衆芸能の公開活動:古典演劇(歌舞伎、人形浄瑠璃、能楽等)、邦楽、邦舞、雅楽、声明、落語、講談、浪曲、漫才、奇術、太神楽など
- 美術・メディア芸術等の創造普及活動:美術(絵画、彫刻、インスタレーション、写真、工芸、書)、デザイン、建築、メディア芸術(漫画、アニメーション、メディア・アート)など
- 多分野共同等芸術創造活動:異なる分野の文化芸術団体等が共同して制作し、特定の分野に留まらない活動、特定の分野に分類することが困難な活動
国内映画祭等の活動
2つ目は、国内映画祭等の活動です。
この区分では、次の活動などが助成対象となります。
- 映画祭:映像芸術の振興・普及に寄与することが期待される優れた国際的な映画祭や、映像芸術の振興・普及及びこれらを通じて地域の振興に寄与することが期待される優れた映画祭
- 日本映画上映活動:映像芸術の振興・普及及びこれらを通じて地域の振興に寄与することが期待される特色ある日本映画の上映活動
地域の文化振興等の活動
3つ目は、地域の文化振興等の活動です。
ここでは、次の活動などが助成対象となります。
- 地域文化施設公演・展示活動(文化会館公演):文化会館等の地域の文化施設の公演活動
- 地域文化施設公演・展示活動(美術館等展示):美術館等の地域の文化施設の展示活動
- アマチュア等の文化団体活動:住民が主体的に参加するアマチュア、青少年等の文化団体による芸術文化の創造普及活動
- 歴史的集落・町並み、文化的景観保存活用活動:次世代への継承に大きく寄与する文化財(歴史的集落・町並み、文化的景観)の保存・活用に係る活動
- 民俗文化財の保存活用活動:次世代への継承に大きく寄与する文化財(民俗文化財)の保存・活用に係る活動
- 伝統工芸技術・文化財保存技術の保存伝承等活動:次世代への継承に大きく寄与する文化財(伝統工芸技術・文化財保存技術)の保存・活用に係る活動
舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動)
4つ目は、舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動)です。
舞台芸術等総合支援事業のうち公演創造活動では、この先で解説する「国際芸術交流」「芸術家等人材育成」「全国キャラバン」などと共通し、自ら主催して行う次の活動などが補助対象となります。
- 音楽:オーケストラ、オペラ、合唱(古楽を含む)、吹奏楽、室内楽(古楽を含む)
- 舞踊:バレエ、現代舞踊、舞踏、民族舞踊
- 演劇:現代演劇、児童演劇、人形劇、ミュージカル
- 伝統芸能:古典演劇(歌舞伎、人形浄瑠璃、能楽等) 、邦楽 、邦舞、雅楽、声明
- 大衆芸能:落語、講談、浪曲、漫才、奇術、太神楽
舞台芸術等総合支援事業のうち公演創造活動は、文化芸術団体が行う優れた公演創造活動を支援することを通じて、我が国の文化芸術を牽引するトップレベルの文化芸術団体を育成し、舞台芸術の水準向上を図るとともに、より多くの国民へ優れた舞台芸術の鑑賞機会を提供することを目的としています。
舞台芸術等総合支援事業(国際芸術交流)
5つ目は、舞台芸術等総合支援事業(国際芸術交流)です。
舞台芸術等総合支援事業のうち国際芸術交流は、文化芸術団体が国内外で実施する舞台芸術の公演活動を支援することを通じて、我が国の文化芸術団体の芸術水準の向上と国際発信力の強化を図り、我が国の国際的なプレゼンスの向上に寄与することを目的としています。
舞台芸術等総合支援事業(芸術家等人材育成)
6つ目は、舞台芸術等総合支援事業(芸術家等人材育成)です。
舞台芸術等総合支援事業のうち芸術家等人材育成では、文化芸術団体が行う、新進芸術家等に対する舞台公演・展覧会等の実践機会や研修機会を提供する取組を支援することを通じて、次代を担い、創造性豊かな新進芸術家等を育成することを目的としています。
舞台芸術等総合支援事業(全国キャラバン)
7つ目は、舞台芸術等総合支援事業(全国キャラバン)です。
舞台芸術等総合支援事業のうち全国キャラバンでは、全国における大規模で質の高い公演等の実施や配信を支援することを通じて、国内における文化的な地域格差を解消するとともに、統括団体による活動拠点の形成を促進することを目的としています。
劇場・音楽堂等機能強化推進事業
8つ目は、劇場・音楽堂等機能強化推進事業です。
これは、日本における文化拠点である劇場や音楽堂等が行う、音楽・舞踊・演劇等の実演芸術の創造発信や、専門的人材の養成、普及啓発のための事業、劇場・音楽堂等間のネットワーク形成に資する事業を支援する助成制度です。
日本映画製作支援事業
9つ目は、日本映画製作支援事業です。
これは、「日本映画」の製作活動のうち、一定期間内に完成し初号試写等を行うことができる活動を対象とする助成制度です。
また、日本国内において、原則として完成後1年以内に「一般に広く公開」することが求められます。
文化・芸能・アーティスト・芸術家向けの補助金申請は「エンタメ弁護士.com」へお任せください
文化・芸能・アーティスト・芸術家向けの補助金申請をご希望の際は、「エンタメ弁護士.com」までご相談ください。最後に、エンタメ弁護士.comの概要を解説します。
エンタメ弁護士.comとは
エンタメ弁護士.comとは、エンタメ法務に特化した専門家がチームを組み、クライアント様をサポートする顧問サービスです。
芸能界やエンタメ業界にはやや特殊な慣習も多いといえます。より実現性の高いサポートを受けるため、業界慣習や事情などを熟知した専門家のサポートを希望する場合も多いでしょう。
しかし、エンタメ業界や芸能業界に特化した専門家は、さほど多くないのが現状です。また、法務分野であっても、弁護士、と弁理士、行政書士、社会保険労務士などはそれぞれ担うことができる業務や得意分野なども異なり、自身で適切な専門家を選定することは容易ではありません。
そこで、エンタメ分野のリーガルサポートに強みを持つ弁護士であり、弁理士でもある伊藤海が、同じくエンタメ分野に特化した専門家チームを立ち上げました。「どの専門家に相談すべきかわからない」という場合でも、エンタメ弁護士.comにご相談頂くことで、適切な専門家によるサポートが可能となります。