VTuber事務所WACTORの裁判の概要を弁護士が解説|事務所が講じるべき対策とは

VTuber事務所WACTORの裁判の概要を弁護士が解説|事務所が講じるべき対策とは

VTuber事務所であるWACTORが所属ライバーを契約違反を理由に提訴し、勝訴した裁判が話題となっています。

このWACTOR裁判とはどのような裁判だったのでしょうか?また、VTuberやYouTuber、事務所はそれぞれ、このような裁判に備えてどのような対策を講じればよいのでしょうか?

今回は、WACTOR裁判の概要を紹介するとともに、WACTOR裁判を踏まえて事務所やVTuber、YouTuberが講じるべき主な対策について弁護士がくわしく解説します。

なお、当サイト(エンタメ弁護士.com)は弁護士の伊藤海が運営しており、エンターテインメント法務に特化した専門家が困りごとの内容に応じてチーム制で対応しています。WACTOR裁判を踏まえてトラブル予防の対策を講じたい芸能事務所様やVTuber様、YouTuber様は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にご相談ください。

WACTORの裁判とは?訴訟の概要

WACTORは、2018年に創業されたVTuber事務所です。公式ホームページによると、「累計フォロワー数200万人・視聴回6,000万回などの実績を持ち、TikTok LIVEやニコニコ動画など複数の配信アプリと一直接契約を交わし」ています。

WACTORの裁判は、WACTORが契約違反をした4名のライバー(ライブ配信を行う配信者)に対して損害賠償を求める訴訟を提起し、その4件すべてで勝訴したものです。公式ホームページによると、4件の損害賠償額は合計で1,000万円を超えているようです。

なお、各ライバーの具体的な契約違反の内容は2026年3月現在、公式ホームページでは公表されていません。

WACTORの裁判において、被告である4名のうち2名は日本国内のライバーであり、1名はスペイン、もう1名はパラグアイのライバーでした。スペインとパラグアイのライバーを被告とする事件では各現地弁護士を代理人として、スペイン語による裁判対応で勝訴しています。

また、パラグアイのライバーを被告とする裁判では、過激派のファンによる脅迫を受けて最初の代理人弁護士が辞任しており、後任の弁護士を見つけて勝訴に至っています。

そして、被告となった日本人ライバーの1人はWACTOR側からセクハラ被害を受けたと主張していたものの、この主張は認められずWACTOR側が勝訴しています。

WACTORの裁判を踏まえて取るべき対策:事務所側

WACTORの裁判を踏まえ、VTuber事務所やYouTuber事務所はどのような対策を講じればよいのでしょうか?ここでは、事務所側が講じるべき主な対策を2つ解説します。

  • 契約書を作り込む
  • 困った際に相談できる弁護士を見つけておく

契約書を作り込む

1つ目は、契約書を作り込むことです。

事務所側として、所属するVTuberやYouTuberに「やってほしくないこと」があることでしょう。また、VTuberやYouTuberがその「やってほしくないこと」をした場合には、必要に応じて契約を打ち切り、かつ違約金を支払ってほしいと考えることも多いと思います。

これを実現するには、契約書の作り込みが不可欠です。特に、「違法ではないもののやってほしくないこと」については、契約書の記載がなければ対処のしようがありません。たとえば、次の内容などが想定されます。

  • 同時に別の事務所に所属すること
  • VTuberの「中の人」の情報を開示するなど、世界観を壊す発信をすること
  • 事務所の悪口をSNSなどに書き込むこと
  • いわゆる「炎上行為」をすること
  • ファンと個人的に交際すること
  • 事務所から支払われる報酬についてSNSなどに書き込むこと

このような、事務所側がVTuberやYouTuberに「やってほしくないこと」を禁止事項として契約書に明記することで、違反の抑止力となります。また、仮に違反が生じた際は、契約解除や違約金の請求など厳正な対応が可能となるでしょう。

困った際に相談できる弁護士を見つけておく

2つ目は、困った際に相談できる弁護士を見つけておくことです。

契約書の禁止事項を定めておくべきとはいえ、的確な内容で契約書を作成するのは容易ではないでしょう。契約書にさえ定めれば、どのような内容であっても有効になるわけではないためです。

VTuberやYouTuberの人権を侵害するような内容を契約書で定めても無効となる可能性が高いほか、契約書が流出して事務所が「炎上」するリスクも生じます。

また、違約金の予定額も契約書で定められるものの、仮に訴訟に発展した際、その請求がそのまま通るとは限りません。一般的にVTuberやYouTuberよりも事務所の方が力が強いと考えられることから、法外な違約金の定めは無効とされるおそれもあります。

そのため、VTuberやYouTuberの所属契約書を作成する際は、弁護士のサポートを受けるとよいでしょう。また、所属するVTuberやYouTuberとの間でトラブルの「芽」が生じた際も、早期に弁護士に相談することで、状況に応じた的確な対応が取りやすくなります。

なお、エンタメ弁護士.comはエンターテインメント法務に特化しており、VTuber事務所やYouTuber事務所へも豊富なサポート実績を有しています。エンタメ法務に強い弁護士をお探しの際は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にご相談ください。

WACTORの裁判を踏まえて取るべき対策:VTuber側

WACTOR裁判を踏まえて、VTuberやYouTuber側はどのような対策を講じればよいのでしょうか?ここでは、VTuber・YouTuber側が講じるべき主な対策を3つ解説します。

  • 契約書への押印前に弁護士に相談する
  • トラブルの内容をSNSなどで発信しない
  • 困った際に相談できる弁護士を見つけておく

契約書への押印前に弁護士に相談する

1つ目は、契約書に安易に押印しないことです。

事務所に所属する場合、契約書は事務所側が用意することが多いでしょう。これまで消費者・労働者の立場でしか契約をしたことがない場合、「相手方から用意された契約書は変更できない」と考えているかもしれません。また、「よほどおかしなことは書かれていないし、もしおかしなことが書いてあれば無効になる」と考える場合もあるでしょう。

しかし、VTuberやYouTuberとして契約する場合、立場上は事業主となることが多く、消費者や労働者のように保護されるわけではありません。そして、契約書に書かれていることは、原則として法令に優先して適用されます。押印した以上、「ちゃんと理解できていなかった」や「内容が理不尽だ」という理由だけで無効にできるわけではありません。

また、相手方から差し出された契約書は、「絶対」ではありません。相手方が契約書を差し入れた段階は「交渉のスタート地点」であり、押印前であれば、理不尽であると感じる条項の変更や削除を交渉できます。

この点を踏まえて、事務所側から差し入れられた契約書には安易に署名や押印をせず、内容が分からない場合は事前に弁護士に相談するとよいでしょう。お困りの際は、エンタメ弁護士.comまでご相談ください。

トラブルの内容をSNSなどで発信しない

2つ目は、事務所側とトラブルになった場合、トラブルの内容を配信で話したりSNSに投稿したりしないことです。

たとえ実際に事務所側の対応に問題があったとしても、トラブルの内容を不特定多数に発信すれば、事務所側から名誉毀損や業務妨害であるとして損害賠償などを求められる可能性があります。

WACTOR裁判でも、WACTOR社の公式ホームページに「弊社はこれまで契約違反者によって深刻な風評被害を被ってきた」旨の記載があることから、被告であるライバーが事務所とのトラブルをSNSなどで発信しておりこれがトラブルの核であった可能性が窺えます。

このような事態を避けるため、たとえ事務所側に問題があったとしても、トラブルの内容を安易に公表することは避けるべきでしょう。

困った際に相談できる弁護士を見つけておく

3つ目は、困った際に相談できる弁護士を見つけておくことです。

所属事務所との間でトラブルが発生したら、できるだけ早期に弁護士にご相談ください。弁護士に相談することで、具体的な状況に応じた対応方法の検討が可能となるためです。

また、先ほど解説したように、契約書の内容は原則として法令の規定に優先します。

とはいえ、人権侵害にあたる内容であったり法外な違約金が定められていたりする場合、訴訟によって一部条項を無効とできる可能性もゼロではありません。そのため、たとえ契約書に不利な内容が書かれていても、諦めずにまずは弁護士に相談するとよいでしょう。

相談先には、エンターテインメント法務に特化した弁護士を選ぶのがおすすめです。お困りの際は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にご相談ください。

VTuberやVTuber事務所へエンタメ弁護士.comが提供できること

VTuberやYouTuber、VTuber事務所などに対して、エンタメ弁護士.comはさまざまなサポートを提供できます。エンタメ弁護士.comは、弁護士・弁理士である伊藤海が立ち上げた専門家チームです。ここでは、主なサポート内容を紹介します。

  • 契約書の作成・レビュー
  • 法律相談
  • トラブル発生時の相手方とのやり取りの代行
  • 訴訟対応

契約書の作成・レビュー

エンタメ弁護士.comでは、弁護士が契約書の作成やレビューを行います。

トラブルが発生した際は、契約書の内容によって明暗が分かれることも少なくありません。弁護士に相談することで、いざという時に自身(自社)の身を守る契約書の作成が可能となります。

また、契約締結の前に弁護士に相談することで、自身(自社)に不利となり得る条項に押印前に気付きやすくなるでしょう。

法律相談

エンタメ弁護士.comでは、弁護士が法律相談に対応します。

トラブルが発生した場合、まずは弁護士に相談をして対処法を聞きたい場合も多いでしょう。また、相手方から理不尽であると感じる要求をされている場合、これに応じるべきかどうか判断に迷うことも多いと思います。

弁護士に相談することで、具体的な状況に応じた対応の見通しを立てやすくなります。

トラブル発生時の相手方とのやり取りの代行

エンタメ弁護士.comでは、弁護士が相手方とのやり取りを代行します。

トラブルが発生した場合、相手方との直接のやり取りを避けたいと考えることも多いでしょう。また、直接やり取りをして不用意な発言をすれば、不利な状況にもなりかねません。

正式に依頼をいただいた場合には、弁護士が交渉を代理するため、相手方と直接やり取りをする必要がなくなります。

訴訟対応

エンタメ弁護士.comでは、弁護士が訴訟対応を行います。

トラブルが難航した場合、最終的には裁判(訴訟)で解決をはかることとなるでしょう。訴訟には弁護士が代理人として対応するため、本業への影響を最小限に抑えられます。

VTuberやVTuber事務所で弁護士をお探しの場合はエンタメ弁護士.comへご相談ください

VTuberやVTuber事務所で弁護士をお探しの際には、エンタメ弁護士.comまでご相談ください。ここでは、エンタメ弁護士.comの主な特長を3つ紹介します。

  • エンタメ法務に特化している
  • 必要に応じてチーム制で対応する
  • 英文契約書にも対応している

エンタメ法務に特化している

エンタメ弁護士.comは、チームの全員がエンターテインメント法務に特化しています。業界事情や業界において生じやすいトラブルを熟知しているほか、業界に関連する裁判例・判例などにも日々アンテナを張っているため、より的確なサポートが提供できます。

必要に応じてチーム制で対応する

エンタメ弁護士.comでは弁護士・弁理士である伊藤海のほか、弁護士、税理士・公認会計士、社会保険労務士、行政書士、司法書士がチームを組んでいます。困りごとの内容に応じて適切な専門家が対応するため、「どの専門家に相談すべきか」とクライアント様側で悩む必要はありません。

また、必要に応じて、複数の専門家がチーム制で対応します。

英文契約書にも対応している

VTuberやYouTuber、VTuber事務所では、海外の企業や個人と契約を締結すべき場面もあるでしょう。エンタメ弁護士.comは英文契約書にも対応しているため、海外との契約であっても一貫したサポートが提供できます。

WACTORの裁判に関するよくある質問

最後に、WACTORの裁判に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

WACTOR裁判のような内容で困った際の相談先は?

WACTOR裁判のような内容で困った際の相談先は、エンターテインメント法務に強みを持つ弁護士がベストです。お困りの際は、エンタメ弁護士.comまでご相談ください。

民事裁判と刑事裁判の違いは?

民事裁判と刑事裁判の最大の違いは、「負けた際に前科がつくかどうか」です。

刑事裁判で有罪判決が確定すれば、被告人に前科がつきます。そのうえで、罪の内容によっては罰金を支払う義務が生じたり、拘禁されたりします。一方で、民事裁判に負けた場合は相手方への損害賠償義務などが確定するだけであり、前科がついたり拘禁されたりするわけではありません。

今回紹介したWACTOR裁判はいずれも民事であり、敗訴したライバーに前科がついたわけではありません。誤解のないよう注意してください。

まとめ

WACTORの裁判について概要を紹介するとともに、WACTORの裁判を踏まえてVTuberやYouTuber、事務所側が講じるべき主な対策を解説しました。

WACTORの裁判は、VTuber事務所であるWACTOR社が所属していた4名のライバーを契約違反を理由に提訴し、勝訴した事件です。この裁判を踏まえ、事務所側としては、契約書を作り込むなどの対策を講じるとよいでしょう。また、トラブルが発生した際に相談できる弁護士を見つけておくことをおすすめします。

一方で、VTuberやYouTuber側としては、契約書に安易に押印することを避ける対策が有効です。また、事務所とのトラブルの内容などを安易にSNSや配信などで公表すれば事務所から提訴され、敗訴するおそれがあります。そのため、発信内容は慎重に検討すべきでしょう。

エンタメ弁護士.comはエンターテインメント法務に特化した専門家によるチームであり、VTuberやYouTuber、芸能事務所などへの豊富なサポート実績を有しています。WACTOR裁判を踏まえ、トラブルを避ける対策を講じたいとご希望のVTuber様やYouTuber様、芸能事務所様などは、エンタメ弁護士.comまでお気軽にご相談ください。