著作者人格権とは?不行使特約の有効性や侵害時の初期対応を弁護士がわかりやすく解説

著作者人格権とは?不行使特約の有効性や侵害時の初期対応を弁護士がわかりやすく解説

著作権の譲渡やライセンスなどをする際は、著作者人格権にも注意しなければなりません。

では、著作者人格権とはどのような権利なのでしょうか?また、著作者人格権の不行使特約とはどのようなものを指すのでしょうか?今回は、著作者人格権の概要や著作者人格権の不行使特約の有効性、著作者人格権が侵害された場合の対応などについて弁護士がくわしく解説します。

なお、当サイト(エンタメ弁護士.com)はエンタメ法務に特化した専門家によるチームであり、弁護士・弁理士である伊藤海が中心となり発案しました。著作者人格権や不行使特約などについて相談できる弁護士をお探しの際は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にお問い合わせください。

著作者人格権とは?

著作者人格権とは、著作者が有する人格的な権利です。

著作物を創作した時点で、著作者には原則として次の2つの権利が生じます。

  1. 著作者人格権:著作者の人格的な利益を保護する権利
  2. 著作権(財産権):財産的な利益を保護する権利

このうち、財産権である著作権は譲渡できるほか、ライセンスすることで収益を得ることも可能です。これに対して、人格権である著作者人格権は譲渡できません。

著作者人格権には、主に次の3つの権利が含まれています。

  • 公表権
  • 氏名表示権
  • 同一性保持権

公表権

1つ目は、公表権です。これは、自分の著作物のうちまだ公表されていないものについて、「公表するかしないか」や「公表するとすれば、いつどのような方法で公表するか」を決める権利です。

たとえば、未公表の著作物を第三者が無断で公開する行為は、この公表権の侵害にあたります。

氏名表示権

2つ目は、氏名表示権です。これは、著作物を公表するときに「著作者名を表示するかしないか」や「表示するとすれば、実名・変名のいずれを表示するか」を決める権利です。

たとえば、著作者が著作者名の表示を求めているにもかかわらず表示しない行為や、著作者がペンネームでの公表を求めているにもかかわらず無断で実名を表示する行為などは、この氏名表示権の侵害にあたります。

同一性保持権

3つ目は、同一性保持権です。これは、著作物の内容や題号を意に反して勝手に改変されない権利です。著作物を無断で改変する場合、この同一性保持権の侵害にあたる可能性があります。

著作者人格権の基本

著作者人格権の基本を解説します。

  • 著作者人格権は自動的に発生する
  • 著作者人格権は譲渡できない

著作者人格権は自動的に発生する

著作者人格権を発生させるために、出願などの手続きは必要ありません。著作者人格権は、著作者が著作物を創作した時点で自動的に発生します。

著作者人格権は譲渡できない

著作者人格権は、一身専属的な権利です。一身専属的な権利とは、その権利の性質から、その人だけが行使・享有できる権利です。たとえば、弁護士資格や医師免許などの資格や、生活保護の受給権などがこれに該当します。

一身専属権は、譲渡や贈与、相続などができません。つまり、弁護士資格を売買したり相続させたりできないのと同じく、著作者人格権を売買したり相続させたりすることはできないということです。

著作者人格権の不行使特約とは?

先ほど解説したように、著作者人格権は一身専属権であることから、譲渡などができません。一方で、著作権は財産権であることから、譲渡などが可能です。そのため、著作権を譲渡などすることで、著作権の権利者である「著作権者」と、著作者人格権を有する「著作者」とが別の人になることとなります。

たとえば、A氏がXという著作物を創作した場合、その時点では著作者も著作権者もA氏です。その後、A氏がXの著作権をB氏に譲渡すると、Xの著作権者はB氏に移ります。一方で、Xの著作者は依然としてA氏のままです。著作者とは原則としてその著作物の創作者のことであり、「A氏がXの著作権をB氏に譲渡したからといって、Xの創作者がBになる」わけではないためです。

そして、著作者人格権は(「著作権者」ではなく)著作者に一身専属的に帰属します。つまり、Xの著作権をB氏に譲渡してB氏が「著作権者」になったとしても、Xの「著作者」は依然としてA氏のままであり、著作者人格権もA氏にあるということです。

そこで検討されるのが、著作者人格権の不行使と特約です。不行使特約について、概要を解説します。

不行使特約の概要

先ほど解説したように、著作権をB氏が譲渡されても、著作者人格権は依然として著作者であるA氏に残ったままです。しかし、著作権の譲渡を受けたB氏としては、作品Xを自社のビジネスで利用するために一定の改変をしたいと考えることも多いでしょう。

著作者人格権も買い取れればよいものの、著作者人格権は一身専属的な権利であるため、買い取ることなどはできません。

そこで、著作権の譲渡契約書やライセンス契約書に「著作者人格権の不行使特約」を設けるよう著作者であるA氏と交渉することとなります。著作者人格権の不行使特約とは、著作者が著作者人格権を行使しない旨の取り決めです。

たとえば、「乙は甲に対し、本著作物の著作者人格権を行使しない」などのように定めることが多いでしょう。

著作者人格権の不行使特約を設けることで、著作者は原則として著作者人格権の行使ができなくなります。

契約書に著作者人格権の不行使特約を設ける場合の注意点

契約書に著作者人格権の不行使特約を定めることで著作者は原則として著作者人格権を行使することはできなくなるものの、どのような場合であっても権利行使ができないわけではありません。著作者の名誉を害するような改変をした場合などには著作者人格権の不行使特約が無効化され、著作者人格権を行使される可能性があります。

そのため、著作者人格権の不行使特約を設けて著作権の譲渡などを受けた側は、「不行使特約があるから何をしてもよい」と考えるのではなく、引き続き著作者の人格権に配慮する必要があるでしょう。

一方で、著作者人格権を侵害された場合には、その侵害の内容によっては不行使特約があっても差止請求などができる可能性があるため、自己判断で諦める前に弁護士に相談することをおすすめします。

著作権に関する契約書の作成をご希望の際や、著作者人格権の侵害についてお困りの際などには、エンタメ弁護士.comまでご相談ください。

著作者人格権を侵害された場合の初期対応

著作者人格権が侵害されたら、まずはどのように対応すればよいのでしょうか?ここでは、著作者人格権が侵害された際の初期対応を解説します。

  • 弁護士へ相談する
  • 契約書がある場合にはその規定を確認する
  • 具体的な法的措置を検討する

弁護士へ相談する

著作者人格権が侵害されたら、まずは弁護士に相談しましょう。弁護士に相談することでそのケースについての責任追及の可否が把握でき、具体的な対応方法の検討が可能となります。

著作者人格権が侵害されて法的責任を追及したいとお考えの際は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にご相談ください。

契約書がある場合にはその規定を確認する

著作者人格権を侵害した相手方との間に契約関係がある場合には、弁護士とともに契約書の内容を確認します。契約書に著作者人格権の不行使特約がある場合、著作者人格権の侵害で法的責任を追及するハードルが高くなるためです。

具体的な法的措置を検討する

次に、弁護士とともに具体的な法的措置の内容を検討します。著作者人格権が侵害された場合にとり得る主な法的措置は、次でくわしく解説します。

著作者人格権が侵害された場合の主な法的措置

著作者人格権が侵害された場合、差止請求や損害賠償請求、名誉回復措置請求が検討できます。これらは「いずれか1つを選択する」ものではなく、事案の内容に応じ、複数を組み合わせて追及することも可能です。

また、相手方に故意がある場合には、差止請求などと併せて刑事告訴をすることも対応の選択肢に入ります。ここでは、それぞれの法的措置の概要について解説します。

  • 差止請求
  • 損害賠償請求
  • 名誉回復措置請求
  • 刑事告訴

差止請求

差止請求とは、侵害行為をやめるよう相手方に求めるものです(著作権法112条)。また、すでに行っている侵害をやめることのほか、侵害行為を組成した物や侵害行為によって作成された物の廃棄など侵害の予防を求めることもできます。

一般的には、弁護士から内容証明郵便を送って行うことが多いでしょう。内容証明郵便とは、いついかなる内容の文書が誰から誰に差し出されたかの証拠が残る郵便です。

内容証明郵便で差止請求をすることで、以後の「侵害であるとは知らなかった」などの主張を封じやすくなります。また、内容証明郵便は訴訟の準備段階で使われることが多いため、相手方へのプレッシャーともなるでしょう。

損害賠償請求

損害賠償請求とは、侵害行為によって損害や精神的苦痛を被った場合において、その損害や苦痛を償えるだけの金銭の支払いを求めるものです。

損害賠償の適正額は侵害行為の内容などによって異なるため、事前に弁護士へ相談したうえでそのケースにおける目安額を把握しておくとよいでしょう。

名誉回復措置請求

名誉回復請求とは、侵害行為によって毀損した著作者の声明を回復させるための措置を求めるものです(同115条)。

著作者の意に反する改変をされて著作者人格権が侵害された場合、著作者としては、改変後のものが自身の作品であると世間に誤解される事態は避けたいことでしょう。そこで、名誉回復措置請求をすることが検討できます。具体的には、謝罪広告の掲載などがこれに該当します。

刑事告訴

刑事告訴とは、犯罪行為の事実や犯人の処罰を求める意思を警察や検察に示すものです。

故意の著作権侵害は刑事罰の対象になるとはいえ、殺人事件などとは異なり捜査機関が独自に捜査を開始することはほとんどありません。そこで、相手に前科をつけたい場合には、刑事告訴をすることとなります。

相手が有罪となり実刑判決が下ると、5年以下の拘禁刑もしくは500百万円以下の罰金、またはこれらの併科に処されます(同119条2項1号)。

ただし、相手に刑事上の責任を問うためには、相手に故意がなければなりません。そのため、まずは内容証明郵便で差止請求をしたうえで、それでも相手が侵害行為をやめない場合に刑事告訴を検討することとなります。刑事告訴までをするか否かは事案の悪質性などと照らし合わせ、慎重に判断する必要があるでしょう。

著作者人格権に関するよくある質問

続いて、著作者人格権に関するよくある質問とその回答を紹介します。

著作者人格権の保護期間は?

著作者人格権は一身専属の権利であるため、保護期間は著作者が生存している間です(著作権法59条)。「創作後〇年」などと定められているわけではありません。

なお、著作者の死亡によって著作者人格権は消滅するものの、そうであるからといって自由な改変ができるようになるわけではないことに注意が必要です。なぜなら、著作者の意に反する改変などの行為は、著作者の死後も行うべきではないと規定されているためです(同60条)。また、著作者人格権が消滅しても、「著作権」は存続している可能性があります。

著作者人格権の不行使特約さえ設ければ、著作物をどれだけ改変しても問題ない?

契約書に著作者人格権の不行使特約を設けたからといって、著作物を自由に改変できるようになるわけではありません。著作者の意に反する改変など度を超えた改変をすると、無制限に著作者人格権の不行使を求める規定が無効であると判断され、責任を追及される可能性があります。

著作者人格権に関してお困りの際はエンタメ弁護士.comへご相談ください

著作者人格権に関してお困りの際は、エンタメ弁護士.comへご相談ください。エンタメ弁護士.comは、弁護士・弁理士である伊藤海が創設した、エンタメ法務に特化した専門家によるチームです。最後に、エンタメ弁護士.comの主な特長を3つ紹介します。

  • エンタメ法務に特化している
  • 必要に応じて専門家がチーム制で対応する
  • 英文契約書にも対応している

エンタメ法務に特化している

エンタメ弁護士.comのメンバーは、全員がエンタメ法務に特化しています。エンタメ業界における取引慣習や判例などを熟知しているため、より的確かつ実践的なサポートの提供が可能です。

必要に応じて専門家がチーム制で対応する

何らかの困りごとが生じても、どの専門家に相談すべきか判断に迷うことも多いでしょう。専門家が有する資格によって対応できる範囲が異なるほか、専門家ごとに得意とする分野が異なる場合もあるためです。

エンタメ弁護士.comは次のメンバーから構成されており、困りごとの内容に応じて最適な専門家が対応できます。また、必要に応じて、複数の専門家がチーム制で対応することも可能です。

専門概要
弁護士・弁理士(伊藤海)カルチャー・エンターテインメント法務、ファッション・アパレル法務、テクノロジー法務、知的財産権法、ライセンス取引、商標権マネジメント等
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英文契約書にも対応している

著作権の譲渡やライセンスでは、海外の企業や個人と契約を締結する場合もあるでしょう。エンタメ弁護士.comは英文契約書にも対応しているため、海外との契約であっても一貫したリーガルサポートが提供できます。

まとめ

著作者人格権の基本や不行使特約の概要、著作者人格権が侵害された場合の対応などを解説しました。

著作者人格権とは、著作者に自動的に発生する人格権です。一身専属的な権利であり、譲渡やライセンスなどはできません。そのため、著作権の譲渡契約やライセンス契約では、著作者人格権の不行使特約を設けることが多く行われています。

ただし、著作者人格権の不行使特約を設けたからといって、著作者の意に反する改変が無制限に許容されるわけではありません。著作者人格権の侵害にあたれば、差止請求や損害賠償請求などの対象となります。

エンタメ弁護士.comはエンタメ法務に特化した専門家チームであり、著作権の譲渡契約書の作成や著作者人格権侵害時の法的措置などへの対応も可能です。著作者人格権について相談できる実績豊富な弁護士をお探しの際は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にご連絡ください。

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