【2025】芸能事務所から独立する際の進め方|起きやすいトラブルを弁護士がわかりやすく解説

芸能事務所から独立する際の進め方|起きやすいトラブルを弁護士がわかりやすく解説

芸能事務所からの独立では、トラブルが少なくありません。そのため、独立を検討していても、トラブルを恐れて独立を躊躇する場合もあるようです。

では、芸能事務所からの独立に関するトラブルにはどのようなものが挙げられるのでしょうか?また、2025年9月末に公正取引委員会から公表された「実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針」では、芸能事務所からの独立についてどのように記載されているのでしょうか?今回は、芸能事務所からの独立で起きやすいトラブルや公表された指針の概要、芸能事務所からの独立交渉の進め方などについて、弁護士がくわしく解説します。

なお、当サイト「エンタメ弁護士.com」は弁護士・弁理士である伊藤海が立ち上げたエンタメ法務に特化した専門家チームであり、芸能事務所からの独立交渉についても豊富な実績を有しています。芸能事務所からの独立でお困りの際は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にご相談ください。

目次

芸能事務所からの独立で起きやすいトラブル

芸能事務所からの独立交渉はスムーズにまとまることもある一方で、トラブルの発端となる場合もあります。はじめに、芸能事務所の独立で散見されるトラブルを紹介します。

  • 芸能事務所から高額な違約金を請求される
  • 契約書の競合避止義務が盛り込まれており、独立後の芸能活動を制限される
  • 独立後の芸能活動を妨害される
  • 自身のタレント名が使えなくなる

これらのトラブルが起きてお困りの際には、エンタメ弁護士.comまでご相談ください。エンタメ弁護士.comは芸能事務所の独立に伴うトラブル対応について豊富な実績を有しており、安心してお任せいただけます。

芸能事務所から高額な違約金を請求される

芸能事務所からの独立に伴い、芸能事務所から高額な違約金を請求される場合があります。

事務所側は、「契約書に記載がある」ことを盾にする場合が多いでしょう。しかし、たとえ契約書に記載されているからといって、必ずしも法外な額の違約金を支払わなければならないわけではありません。

違約金の規定を無効化したり、違約金を減額したりできる可能性があるため、お困りの際はエンタメ弁護士.comにご相談ください。

契約書の競合避止義務が盛り込まれており、独立後の芸能活動を制限される

芸能事務所からの独立に伴い、独立後の芸能活動を制限される場合があります。

事務所側は、契約書に規定のある「競業避止義務」を盾にすることが多いでしょう。しかし、競業避止義務は日本国憲法22条に定められた「職業選択の自由」に反する可能性があり、必ずしも全面的に有効となるわけではありません。

条項を無効化したり義務を軽減したりできる可能性があるため、お困りの際はエンタメ弁護士.comまでご相談ください。

独立後の芸能活動を妨害される

芸能事務所からの独立に伴い、独立後の芸能活動を妨害される場合があります。

たとえば、「タレント側のわがままによって契約解消に至った」と思わせるような情報を流したり、制作会社や広告代理店などにそのタレントをキャスティングしないよう要請したりすることなどが想定されるでしょう。

このような妨害行為は、独占禁止法などの法令に違反する可能性があります。お困りの際は、エンタメ弁護士.comにご相談ください。

自身のタレント名が使えなくなる

タレント活動をする中で、芸能事務所がタレント名やグループ名などを商標登録することがあります。これは自社に所属する大切なタレントの名称が、他者に無断で使用されないための対策です。

しかし、芸能事務所からの独立にあたって、商標権者である芸能事務所からタレント本人に対してもその名称やグループ名などの使用が許諾されず、独立後にこれまで使ってきたタレント名やグループ名が使えなくなるトラブルが想定されます。この点は冒頭で紹介した指針でも問題視されており、このようなトラブルの抑止につながることが期待されています。

【2025年9月30日公表】芸能事務所からの独立に関する指針の主な内容

芸能事務所からの独立に伴うトラブルが散見されることを受け、2025年9月30日、公正取引委員会から「実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針」が公表されました。この指針ではトラブル予防のために主に芸能事務所側が採るべき対応が記載されており、独立交渉にあたっても大いに参考となります。

この指針に違反したからといって、直ちに罰則が適用されたり契約条項が無効となったりするものではありません。しかし、この指針は独占禁止法違反に当たるか否かの判断にあたって参考とされるものであり、芸能事務所側としては遵守すべき基準となるでしょう。

ここでは、この指針の中から、芸能事務所からの独立に関して参考となる主な規定を抜き出して紹介します。

専属義務に係る契約期間の設定について

タレント等に課す専属義務の期間を一定期間確保する必要がある場合、契約上その期間を明確に規定することが求められます。また、芸能事務所側が提示する期間より短い契約期間をタレント等の実演家が求める場合には、芸能事務所が育成等のための投資費用(「育成等費用」といます)を合理的な範囲で回収し、かつ合理的な範囲で収益を確保するために必要な期間について実演家に十分説明して協議することとされました。

さらに、契約期間を定めない場合は、通例として両当事者による解除が可能であることを踏まえ、実演家が希望するタイミングで退所を認めることとされています。

期間延長請求権について

契約書に、芸能事務所からの請求により契約を更新できる権利である「期間延長請求権」を定めることがあります。この規定がある場合であっても、芸能事務所側だけの判断で無制限に期間延長ができるのではなく、育成等費用を合理的な範囲で回収し、かつ合理的な範囲で収益の確保の必要性があると認められる場合において、1回に限るなど合理的な範囲で行使できるものとされました。

また、この期間延長請求権を行使する際は、金銭的補償による代替も検討した上で、合理的な範囲で育成等費用の未回収分を回収し、かつ合理的な範囲で収益を確保するために必要な期間とし、その理由について実演家に対し十分に説明することが求められます。

競業避止義務等の規定について

退所に際してトラブルの原因となることが多い競業避止義務について、指針では、原則として、契約上競業避止義務等を規定しないこととされました。また、既存の契約で定められている場合も競業避止義務等を定める条項を削除することとされています。

そのうえで、仮に保護すべき営業秘密を実演家が把握するような場合には、秘密保持契約の締結など、より競争制限的でない他の手段を検討すべきとされました。

移籍・独立に係る金銭的給付の要求について

移籍・独立にあたって芸能事務所が金銭的給付を求める場合、合理的な範囲で育成等費用の未回収分を回収し、かつ合理的な範囲での収益を確保するために必要かつ相当と認められる範囲に限るものとすることとされました。

また、退所にあたって実際に金銭的給付の要求を行う際は、実演家に対して要求する金額の算定根拠を示すとともに、その必要性・相当性を十分に説明し、実演家と協議することが求められます。

これにより、たとえ契約書に規定されていても、法外な違約金の請求が認められないことが明確になりました。

移籍・独立への妨害について

指針では、移籍・独立した実演家が移籍・独立後に円滑に活動できるよう、活動を妨害するような言動をしないことが明記されました。

また、もう一歩踏み込み、移籍・独立した実演家について、たとえば放送事業者等に対して円満退所でなかったことやトラブルがあったことを伝えて起用しないよう放送事業者等に忖度させたりトラブルの可能性があると思わせたりすることで起用を見送らせ事態とならないよう、言動に留意すべき旨も記載されています。

成果物に係る各種権利等の利用許諾について

放送事業者などの取引先などから利用の申出があった場合には、各種権利等の利用を許諾しないことに合理的な理由がない限り、芸能事務所は各種権利等の利用を許諾することとされました。これは、独立後に、独立前の楽曲や出演作などの放映が妨害される事態を避けるための指針です。

また、何らか理由があり権利等の利用を許諾しない場合には、その理由について許諾を求めた者に十分説明することとされました。

芸名・グループ名の使用制限について

独立後にこれまでの芸名やグループ名(「芸名等」といいます)が使用できない場合、独立後の活動に甚大な影響が及びます。そこで、芸名等に関する権利を芸能事務所に帰属させる場合には契約上明確に規定した上で、実演家に対して十分に説明し協議すべきこととされました。

また、合理的な理由が無い限り芸名等の使用は制限せず、制限する場合にもその制限の方法は合理的な範囲の使用料の支払等の代替的な手段も含めて合理的なものとし、その理由についても実演家に十分に説明し協議することとされています。

芸能事務所から独立したい場合の進め方

芸能事務所からの独立したい場合、まずは何をすべきなのでしょうか?ここでは、芸能事務所からの独立の一般的な進め方を解説します。

  • 当初交わした契約書の内容を確認する
  • 弁護士へ相談する
  • 芸能事務所と独立へ向けて交渉する

当初交わした契約書の内容を確認する

芸能事務所からの独立を検討している場合、その芸能事務所と交わした契約書の内容を確認します。契約書の内容を確認することで、独立にあたって事務所側から主張されるであろう内容が予想でき、先手を打ちやすくなるためです。

弁護士へ相談する

続いて、自身で芸能事務所に独立を申し入れる前に、芸能・エンタメ業界にくわしい弁護士に相談します。事前に弁護士に相談することで事務所側から主張されそうな内容を把握でき、対応策を練りやすくなるためです。

また、契約期間の定めによってはすぐに独立するのではなく、「少なくともあと半年は待ってから独立交渉を始めた方が良い」場合などもあり、このような判断もしやすくなるでしょう。

芸能事務所からの独立について相談できる、実績豊富な弁護士をお探しの際は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にお問い合わせください。

芸能事務所と独立へ向けて交渉する

弁護士に相談して対応の方針を決めたうえで、芸能事務所に独立を申し入れ、交渉を始めます。

なお、独立交渉はまず自身だけで行い、交渉がまとまらない場合に弁護士の同席や代理を受ける場合もあれば、はじめから弁護士が同席したり弁護士が代理したりする場合もあります。これらの対応方針は、事務所とのこれまでの関係性などから検討すると良いでしょう。

芸能事務所からの独立について弁護士のサポートを受けるメリット

芸能事務所からの独立にあたっては、弁護士のサポートを受けるのがおすすめです。ここでは、弁護士のサポートを受ける主なメリットを3つ解説します。

  • 不当な要求に毅然とした対応がしやすくなる
  • 芸能事務所との交渉がまとまりやすくなる
  • 精神的な負担が軽減できる

芸能事務所からの独立にあたって弁護士のサポートをご希望の際は、エンタメ弁護士.comまでご相談ください。お困りの内容や状況に応じ、最適なリーガルサポートを提供します。

不当な要求に毅然とした対応がしやすくなる

1つ目は、不当な要求がされたとしても、毅然とした対応がとりやすくなることです。

「実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針」が公表されたとはいえ、独立にあたって事務所側から不当な要求をされる可能性がゼロになったわけではありません。事務所側から強い態度に出られると、たじろいでしまう場合も多いでしょう。

弁護士に対応を依頼することで、独立交渉の場に弁護士が同席したり、弁護士が交渉を代理したりすることが可能となります。これにより、不当な要求に屈することなく、毅然とした対応が実現できます。

芸能事務所との交渉がまとまりやすくなる

2つ目は、交渉がまとまりやすくなることです。

弁護士が同席したり交渉を代理したりすることで、事務所側としても不当な要求がしづらくなります。弁護士が相手であれば法令や指針、過去の判例などを熟知しており、不当な要求を呑むよう丸め込むことは困難であるためです。

また、弁護士が関与するということは、万が一トラブルに発展すれば裁判に発展しかねないとのメッセージともなります。事務所側にとっても、勝ち目の薄い主張を続けて裁判に発展し、対応が長引く事態は得策ではないでしょう。そのため、調停や裁判に至ることなく交渉がまとまる可能性が高くなります。

精神的な負担が軽減できる

3つ目は、精神的な負担を軽減しやすくなることです。

自身で事務所と独立交渉をすることに、不安を感じる場合も多いでしょう。弁護士に交渉の場に同席してもらったり交渉を代理してもらったりすることで絶対的な味方ができ、精神的な負担の軽減につながります。

芸能事務所からの独立に関するよくある質問

続いて、芸能事務所からの独立に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

指針に反する契約書条項は自動的に無効になる?

契約書の条項が指針に違反しているからといって、自動的にその条項が無効となるわけではありません。最終的に条項を無効化できるか否かは状況によって異なるため、お困りの際はエンタメ弁護士.comにご相談ください。

芸能事務所からの独立で事務所とトラブルになったらどう解決する?

芸能事務所からの独立に関して事務所とトラブルになった場合には、まずは弁護士が代理での交渉を試みることが一般的です。それでも解決に至らない場合には、裁判所での意見調整手続きである「調停」や、裁判所に結論を下してもらう「訴訟」へと意向して解決をはかります。

具体的な進め方は状況によって異なるため、芸能事務所との独立交渉にあたってトラブルが予見される場合には、エンタメ弁護士.comにご相談ください。

芸能事務所からの独立でお困りの際はエンタメ弁護士.comにご相談ください

芸能事務所からの独立でお困りの際はエンタメ弁護士.comにご相談ください。エンタメ弁護士.comはエンタメ法務に特化した専門家によるチームであり、弁護士・弁理士である伊藤海が創設しました。最後に、エンタメ弁護士.comの主な特長を3つ紹介します。

  • エンタメ法務に特化した専門家集団である
  • 必要に応じて専門家がチーム制で対応する
  • 海外との契約にも対応している

エンタメ法務に特化した専門家集団である

芸能業界にはやや特殊な取引慣習も多く、的確なサポートを実現するにはこれらの慣習を理解しておく必要があるでしょう。エンタメ弁護士.comはメンバーの全員がエンタメ分野に特化しているため、より実践的なサポートを提供できます。

必要に応じて専門家がチーム制で対応する

専門家は保有資格により対応できる範囲が異なっているほか、専門家によって得意とする分野が異なることも多いため、誰に相談すべきか判断に迷うことも多いでしょう。

エンタメ弁護士.comは、困りごとの内容に応じた専門家が必要に応じてチーム制で対応します。そのため、ご相談にあたって、「どの専門家に相談すべきか」と悩む必要はありません。

海外との契約にも対応している

芸能活動をする中で、海外の企業や個人と契約を締結すべき場面が生じることもあるでしょう。エンタメ弁護士.comは英文の契約書にも対応しているため、海外との契約についても一貫したサポートが実現できます。

まとめ

芸能事務所からの独立に関して生じやすいトラブルを紹介するとともに、2025年9月に公表された指針の内容や独立交渉の進め方などを解説しました。

芸能事務所からの独立を検討する際は、まずは契約書を確認したうえで、弁護士に相談すると良いでしょう。弁護士に相談することで事務所側からなされる可能性のある主張が想定でき、事前に対策を練りやすくなるためです。また、交渉の場に弁護士の同席を受けたり交渉を代理してもらったりすることで、交渉をスムーズに進めやすくなる効果も期待できます。

エンタメ弁護士.comはエンタメ法務に特化した専門家チームであり、芸能事務所からの独立や独立後の事務所の立ち上げについても豊富なサポート実績を有しています。芸能事務所からの独立について相談できる専門家をお探しの際は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にご連絡ください。

お問い合わせする