2.5次元俳優が注目されており、企業がPRなどに起用するケースも増えています。話題性もあることから、2.5次元俳優を自社に所属させたいと検討している事務所も少なくないでしょう。
では、2.5次元俳優とはどのような俳優を指すのでしょうか?また、2.5次元俳優を事務所に所属させる場合、契約にはどのような条項を盛り込めばよいのでしょうか?今回は、2.5次元俳優の概要や2.5次元俳優をCMに起用するメリット・デメリット、2.5次元俳優を事務所に所属させる際に交わす契約書に設けるべき条項などについて、弁護士がくわしく解説します。
なお、当サイト(エンタメ弁護士.com)は弁護士の伊藤海が運営しており、2.5次元俳優が事務所に所属する際の契約書作成支援を行っています。2.5次元俳優と交わす契約についても相談できる、エンタメ法務に特化した専門家をお探しの際は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にお問い合わせください。
2.5次元俳優とは?
「2.5次元俳優」とは、アニメや漫画、ゲームなどに登場する「2次元」のキャラクターを、ミュージカル舞台などの「3次元」で違和感なく演じられる俳優を指します。つまり、現実に存在する人間でありつつも、2次元キャラクターのように見える俳優ということです。
2.5次元俳優には2次元に寄せた容姿のみならず、所作や話し方、ダンス、歌唱、アクションなどの多方面においてキャラクターを忠実に再現することが求められます。裏を返せば、アニメなどの世界観を壊すことなくこれを実現できる俳優が、ファンなどから「2.5次元俳優」と称されるともいえるでしょう。
2.5次元俳優をPR等に起用するメリット
2.5次元俳優がPRなどに起用されるケースが増えています。ここでは、2.5次元俳優をPRなどに起用する主なメリットを3つ解説します。
- 「推し活」との相性が良い
- SNSでの拡散効果が期待できる
- 高い費用対効果が見込まれる
「推し活」との相性が良い
1つ目は、いわゆる「推し活」との相性が良いことです。「推し活」とは、好きなアニメや漫画のキャラクター、俳優、アイドル、アーティストなどを熱心に応援することを指します。
まるでアニメや漫画から飛び出してきたような2.5次元俳優は、この「推し活」との相性が良いとされています。2.5次元俳優が演じるアニメや漫画のキャラクターのファンが2.5次元俳優をも「推し」とする場合もあれば、2.5次元俳優自身に熱心なファンがつくこともあるでしょう。
「推し活総研」の調査によると、2025年における推し活市場は3兆超にも上るとされています。熱心な「推し活」をする人の中には「推し」の公式グッズを購入するのみならず、「推し」がCMに起用されている商品を優先的に購入する人もいるようです。また、購入にまでは至らなくとも「推し」が出ているCMはファンから熱心に見てもらえる可能性が高く、企業や商品の認知につながるでしょう。
参照元:推し活人口は1384万人、市場規模は3兆5千億円に!第2回 推し活実態アンケート調査結果を公式noteで公開。(PR TIMES)
SNSでの拡散効果が期待できる
2つ目は、SNSでの拡散効果が期待できることです。
先ほど解説したように、2.5次元俳優には熱心なファンがつくことが少なくありません。熱心なファンは「推し活」の一環として、「推し」の素晴らしさを周囲に広めるいわゆる「布教」活動をすることがあり、その2.5次元俳優が出演するCMをSNSで拡散してもらえる効果が期待できます。
高い費用対効果が見込まれる
3つ目は、高い費用対効果が見込まれることです。
2.5次元俳優には熱心なファンがつきやすい一方で「ニッチ」な存在であり、TVなどに頻繁に出演している俳優などと比較してキャスティング料が低い傾向にあります。また、高額な広告料を支払ってテレビCMなどを大量に出稿しなくとも、ファンが自ら「推しの出演作」であるCMを公式サイト上まで見に来たり、拡散してくれたりする可能性もあります。
そのため、費用対効果が高めであるといえるでしょう。
2.5次元俳優をPR等に起用するデメリット・注意点
2.5次元俳優を企業PRなどに起用することには、デメリットもあります。ここでは、主なデメリットと注意点を2つ解説します。
- 男性への遡及は弱い傾向にある
- 一般的な認知度は高くない
男性への訴求は弱い傾向にある
一般的に、2.5次元俳優のファンには女性が多いとされています。これは、2.5次元俳優が出演するミュージカル舞台の原作の多くが、女性ファンが多い作品であることによるものであると考えられます。
そのため、2.5次元俳優は男性への訴求は弱い傾向にあります。ミスマッチを避けるため、PRをしたいターゲット層とその2.5次元俳優のファン層にズレがないことを事前に確認しておく必要があるでしょう。
一般的な認知度は高くない
2.5次元俳優はやはりニッチな存在であり、一般的な認知度が高いとは言い難いでしょう。そのため、一般大衆向けの商品のPRや、BtoBの商品のPRには向かない可能性があります。
2.5次元俳優と所属契約を締結する際の主な条項
事務所が2.5次元俳優と所属契約を締結する場合、契約書にはどのような条項を盛り込めばよいのでしょうか?ここでは、主な条項とそれぞれのポイントを解説します。
- 専属・非専属の別
- 報酬
- 活動経費の負担
- 知的財産権の帰属
- 俳優の禁止事項・遵守事項
- 契約期間・更新
なお、ここで紹介するのは一例であり、実際に設けるべき条項や注意すべきポイントは状況や、その契約の中で重視したい事項などによって異なります。2.5次元俳優との契約締結をご検討の際は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にご相談ください。
専属・非専属の別
2.5次元俳優と締結する契約では、専属であるか非専属であるかを明記します。
非専属の場合、その2.5次元俳優が他社と重ねて契約を締結したり、事務所を通すことなく自分で仕事を獲得したりすることも可能です。一方で、専属の場合はその2.5次元俳優が重ねて他の事務所と契約することはできません。また、事務所を通さずに自分で仕事を獲得することも禁止することが多いでしょう。
特に自身で仕事を獲得することまでが禁じられるか否かについては齟齬が生じやすいため、専属の場合には単に専属である旨だけを記載するのではなく、事務所を通さない自身での仕事獲得を認めるか否かについても契約書に明記しておくべきでしょう。
報酬
2.5次元俳優と締結する契約では、報酬の算定方法を定めます。2.5次元俳優の報酬は、次のいずれかの方式で定めることが多いでしょう。
- 定額制:俳優が受けた仕事の量や事務所が得た報酬額などに関わらず、毎月定額を支払う形態
- 定額+歩合制:一定の定額報酬に加え、俳優が受けた仕事に応じて歩合報酬を支払う形態
- 完全歩合制:俳優が受けた仕事に応じて、歩合報酬のみを支払う形態
いずれの方式を選択するかは、その俳優の活躍状況や今後の見通し、事務所の方針などを踏まえて、俳優側と交渉したうえで検討します。
報酬の支払い方式や金額、具体的な計算方法に齟齬が生じないよう、契約書にはこれらの事項を明記しましょう。また、「毎月1日から末日までの報酬を、翌月25日(休日の場合は前営業日)に支払う」など、報酬の計算期間と支払い時期についても明記します。
活動経費の負担
2.5次元俳優の活動では、さまざまな経費がかかります。代表的な活動経費には、移動費や宿泊費、オーディション参加費、衣装代、メイク代などが挙げられます。
契約書には、これらの経費をそれぞれどちらが負担するかを明記しましょう。すべてを事務所側が負担する場合もある一方で、俳優側が一部の経費を負担する場合もあります。
知的財産権の帰属
2.5次元俳優が活動する中では、著作権などさまざまな知的財産権が発生します。知的財産の帰属に関しては退所時などにトラブルとなりかねないため、知的財産権がどちらに帰属するのか契約書に明記しておくべきでしょう。二次利用などを円滑にするため、事務所側に帰属すると定めることが一般的です。
併せて、2.5次元俳優の活動名について、事務所が商標出願をすることについて同意を得ておくとスムーズでしょう。商標登録とは自社の商品・サービスを他社の商品・サービスと差別化するために、名称やマークなどについて特許庁へ出願して登録を受ける制度です。
エンタメ弁護士.comの創設者である伊藤海は弁護士のほか弁理士でもあるため、商標登録についてもご相談いただけます。
俳優の禁止事項・遵守事項
2.5次元俳優と締結する契約では、俳優側の禁止事項や遵守事項について定めます。
事務所側が「やってほしくないこと」や「守ってほしいこと」を契約書に明記しておくことで、違反の抑止力となります。また、違反時には契約解除ができる旨や違約金の定めなどを記載することで、トラブル発生時にスムーズな解決がはかりやすくなります。
契約期間・更新
2.5次元俳優と締結する所属契約では、契約期間について定めます。契約期間は、1年から3年程度とすることが一般的です。2.5次元俳優の活躍は未知数であることも多く、あまり長期の契約とする場合にはその間に大きく状況が変わり、契約内容がそぐわなくなる可能性があるためです。
併せて、更新についても定めておきましょう。更新時期の2.5次元俳優の状況を見極めたうえで必要に応じて報酬などの内容を改訂できるよう、同じ内容で更新するのではなく、状況に応じて契約内容を改訂できる旨の規定を盛り込むことをおすすめします。
2.5次元俳優との契約締結に関するよくある質問
続いて、2.5次元俳優との契約締結に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
2.5次元俳優と締結する所属契約書はタレント所属契約を流用してもよい?
2.5次元俳優と締結する所属契約の契約書に一般的なタレント所属契約の契約書を流用できることは、おすすめできません。なぜなら、タレント所属契約の内容が、2.5次元俳優の所属契約の内容と同じであるとは限らないためです。
特に、2.5次元俳優は舞台を中心とした活動になることも多いため、これを踏まえた条項の検討が必要となるでしょう。
2.5次元俳優の契約締結は誰に相談すべき?
2.5次元俳優との契約締結に関する相談先としては、弁護士が適任です。弁護士は、法律のみならずトラブル対応のプロでもあり、想定されるトラブルから「逆算」をした契約条項の検討が可能であるためです。
ただし、エンタメ業界における法務は弁護士によって得意・不得意が分かれやすい分野でもあります。そのため、弁護士であれば誰でも良いと考えるのではなく、エンタメ法務に強い弁護士へ相談すると良いでしょう。
2.5次元俳優の契約締結でお悩みの際は、エンタメ弁護士.comへご相談ください。
2.5次元俳優との契約締結でお悩みの際はエンタメ弁護士.comにご相談ください
2.5次元俳優との契約締結でお悩みの際は、エンタメ弁護士.comへご相談ください。最後に、エンタメ弁護士.comの概要と特長を紹介します。
エンタメ弁護士.comとは
エンタメ弁護士.comとは、エンタメ法務に特化した専門家のチームです。弁護士であり弁理士でもある伊藤海が発案し、他の専門家に声を掛けることで実現しました。
主なメンバーとそれぞれが得意とする業務の内容は、次のとおりです。
- 弁護士・弁理士(伊藤海):カルチャー・エンターテインメント法務、ファッション・アパレル法務、テクノロジー法務、知的財産権法、ライセンス取引、商標権マネジメント等
- 弁護士:スタートアップ法務、AI・データ等の先端テクノロジー法務(エンタメ掛け合わせサービスを含む)、広告・キャンペーン審査、資金調達、SO発行、M&A、IPO準備、規約・プラポリ作成などその他日常企業法務等
- 行政書士:芸術エンタメ補助金申請、動画制作補助金、芸術エンタメ法人設立、任意団体設立、芸術団体経営コンサルティング、個人クリエイターアーティスト開業サポート
- 社会保険労務士:労務相談、労働保険・社会保険手続き代行、就業規則作成、人事労務管理クラウドサービス導入支援、クリエイティブ職の評価制度導入支援、エンターテインメント健康保険組合加入サポート、芸能従事者の労災特別加入サポート
- 司法書士:会社法人設立、各種変更登記(役員変更、本店移転、資本金変更など)、定款の見直し、株主総会・取締役会議事録作成等
- 公認会計士・税理士:会計監査、内部統制監査、内部統制構築支援、経理コンサルティング、エンタメ・クリエイター業の税務顧問、確定申告書作成、税務調査立会、クラウド会計導入支援、法人成りシミュレーション等
エンタメ弁護士.comの特長
エンタメ弁護士.comの主な特長は次のとおりです。
- エンタメ法務に特化している
- 必要に応じて専門家がチーム制で対応する
- 英文契約書にも対応可能
エンタメ法務に特化している
各士業は法律の定めによって担える業務の範囲が決まっているほか、得意とする業務も異なるため、必要に応じて専門家を使い分ける必要があります。しかし、エンタメ業界に強い専門家を自分で1人ずつ探すのは容易ではないでしょう。
エンタメ弁護士.comのメンバーは全員がエンタメ法務に特化しているため、他の士業の関与が必要となった場合であっても、自分で一から専門家を探す必要がなくなります。
必要に応じて専門家がチーム制で対応する
困りごとの内容によって相談すべき専門家が異なるとはいえ、ご相談者様自身が「どのようなときに、誰に相談すべきか」を的確に把握するのは容易ではないでしょう。また、困りごとの内容によっては、複数の専門家の関与も必要となります。
エンタメ弁護士.comは困りごとの内容に応じて適切な専門家が対応するうえ、必要であれば複数の専門家がチーム制で対応するため、ご相談者様が「どの専門家に相談すべきか」と悩む必要はありません。
英文契約書にも対応可能
2.5次元俳優と所属契約を締結する事務所は、海外の企業や個人と契約を締結する場面もあるでしょう。
エンタメ弁護士.comは英文契約書にも対応しているため、海外との契約であっても一貫したリーガルサポートを実現できます。
まとめ
2.5次元俳優の概要や2.5次元俳優を起用するメリット・デメリット、2.5次元俳優と締結する契約書作成のポイントなどを解説しました。
2.5次元俳優とは、漫画やアニメなどの登場する2次元のキャラクターを、違和感なく演じられる3次元の俳優です。2.5次元俳優には、熱心なファンがつくことも少なくありません。
2.5次元俳優と契約を締結する際は、専属・非専属の別や報酬、活動経費の負担などを定めましょう。2.5次元俳優との契約には注意点も少なくないため、弁護士にご相談ください。
エンタメ弁護士.comはエンタメ法務に特化した専門家によるチームであり、2.5次元俳優と締結する所属契約にも対応しています。2.5次元俳優との契約締結について相談できる専門家をお探しの際は、エンタメ弁護士.comまでお気軽にお問い合わせください。
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